Column 熊さんのコラム
2003年08月18日(月)

【外交問題コラム5】 北朝鮮問題の本当の意味

しかし、それ以上に、実は日本の国運に関わる大きな問題がある。それがもうひとつの北朝鮮問題です。

北朝鮮問題はメディアのレベルで言えば、拉致問題が主役になっています。それももちろん重要課題ですが、それ以上に真剣に考えなければならないことは、北朝鮮の核問題――北朝鮮が核保有国になるかどうか――この問題です。

仮に、北朝鮮が核保有国になったとすると、日本の安全は決定的に脅かされ、これまで危ういバランスを保ってきた北東アジアの安定秩序は言うまでもなく激変します。

米国にとってもこの問題は大きな問題で、米国はこれまで北朝鮮を「悪の枢軸」と呼び、「ならず者国家は許さない」、すなわちイラクの次は北朝鮮だと、強硬姿勢に出る戦略をとってきました。

そして現在、この問題は日米を含む関係六カ国で協議する運びとなりました。

しかし、真に問題なのは、こうした動きの底流にあるものを、我々が正確に把握できていないということなのです。今回の北朝鮮問題がわれわれに突きつけているものは何か。これは極めて重要な問題です。

実は、外交専門誌として名高い『フォーリン・アフェアーズ』の七・八月号に重要な論文が掲載されました。その論文は二人の連名で発表されています。一人はモートン・アブラモヴィッツ。民主党系の人物で、前クリントン政権時代の駐タイ大使でした。現在は米国の研究所「Century Foundation(センチュリー・ファウンディション)」の研究員をしています。もう一人はステファン・ボスワース。前駐韓国大使で、現在はハーバート大学にあるタブツ・カフツのフレッチャー・スクール(外交専門学校)の学長をやっている人物です。

この二人の論文を読んだ時、私自身、こういう時代がくるだろうなという予感はありましたが、こうして表現されてみると改めて愕然としました。

「日本のパワーと信頼性はこれまでの地位から滑り落ち、とりわけ9.11以後、替わって中国の戦略的価値が増大した」――。そこには我々日本がこれまで想定していた米国のアジア政策を、劇的に一変させるような重大事項が書かれてあったのです。

二人はまず、この十年の“初め”と“終り”の比較対照論から入り、そこで中国が劇的に勃興している、政治的にも経済的にも非常に伸びた、と指摘しています。そして、その一方で、日本が劇的に沈没し、しかも、なおかつ没落し続けていると指摘しています。

この十年の“初め”というのは、日本で言えば、ちょうど宮沢内閣が終って細川内閣ができる、あの転換期のことです。そして、現在がその“終り”にあたります。

残念ながら、二人はそこでは具体的なデータを示していません。そこで、私なりに独自に調べてみました。


〈つづき〉

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